このヤブ医者め!!!

わたしには、長年通っているバーがあります。そのバーのマスターは、その業界では大成功した人で、不思議な魅力があるお方でした。

もう80歳近いのに夜の7時から朝の4時まで現場に立つという、まさに『鉄人』でした。

ある日店に行くと、マスターが死にそうな顔をしていました。これまでのマスターの姿からは想像できないほどに体調が悪そうでした。

もう立っているのもツライという感じだったのでワケを聞いたのですが、、、、その理由は不可解なものでした。

腰が痛いんだよね。

マスター曰く、「腰が痛い」というのです。

元気なマスターが、スタッフに仕事を任せて、テーブル席のあるこちらにきて座ってしまっています。

もう大御所的な存在なので、客と一緒に酒を飲もうが何をしようが、誰からも文句はいわれないのですが、駅伝を走り終わったランナーのような憔悴っぷりなので、さすがに心配になってしまいました。

評判の整体師や、針治療なども試したそうなのですが、全く効果がなく、ほとほと困っているそうです。そして4日後、とうとう歩くのも辛くなり、病院に駆け込むとそのまま入院を勧められ、「あと数日くるのが遅かったら、もう手遅れでしたね。」といわれてしまったそうです。

痛みの原因は「がん細胞」でした。整体や、はり治療で治るわけがありません。。。

医者は神様じゃないですから!

実はこのマスター、10年ほど前に別の癌治療で手術・入院しており、別の病院に40年間もお世話になっていました。

しかし通院する病院は変わらずとも、10年の間に医者は何度も変わったそうです。最近では経験の浅そうな若い医者が担当してくれていたそうなのですが、いくら腰の痛みを訴えても痛み止めを出すばかりで、検査すらしてくれなかったのだそうです。

「あの医者に、殺されるところだった。」とマスターはいいました。そして「もうあの病院には絶対にいかない。もう信頼できない。」と40年間通ってきた病院に別れを告げたのです。

マスターは担当の若い医者にこう質問しました。「なぜ?検査をしてくれなかったのか?」と。すると医者は「わたしは神様じゃありませんから。」と開き直ったそうです。

にわかには信じがたい話ですが、数か月間も腰の痛みに苦しんだまま、根本原因を突き止められないまま、なかば放置されていたのは事実です。

さて、ここからが本題です。もしあなたが経験の浅い若い医者だったら、どのように患者に語りかけるでしょうか?

思考実験

患者は「腰が痛い」といっているのですから、医者の立場としてまず理解できるのは「患者は痛みを取り除きたいのだ」という欲求です。

そして痛み止めを処方してしばらく時間が経過するのに、状態がまったくよくならない状況を鑑みれば、患者が痛みの原因がわからない不安の感情を抱えていることも容易に想像できるでしょう。

さらに患者は腰が痛いという症状をもとに、「整体や、はり治療を受ければ症状が改善する」と判断していることも話をすればすぐにわかるはずです。

もちろん実際の医療現場ではもっとずっと複雑でしょうが、今回の講義では欲求・感情・思考をカンタンに把握することに留めておきます。

さて、ここで医者であるあなたの出番です。患者から読み取れるすべての情報を手掛かりにして、患者の置かれている状態を「再現」するのです。例えばこういった具合です。

「腰が痛い。腕のいい整体にもいった。痛み止めを飲んだ。でも痛みは治まらない。だからここに来た。もしかしたら別の原因があるのではないか??と疑っているわけですね。この病院には、あなたの40年間分のカルテがあります。10年前に癌で手術・入院されていますね?もしかしたら、、、、癌が原因かもしれませんね。もしかして、腰が痛いといいますが、腰から背中にかけてチクチクとした痛みがでるのではないですか?」と患者に語りかけることができます。

患者は高い確率で、「そうなんですよ!わたしの痛みを理解してくれたのは先生がはじめてです。どうかもっと詳しく状況を教えてくれませんか?必要であれば検査もしてもらえませんか?」と思うでしょうし、原因を突き止めることができるだけで、「今日、この病院にきてよかった。」と思うはずです。

また大まかな治療方針についての仮説を聞くことができれば「不安」という感情レベルの悩みから解放され、「整体で治せる」という誤った思考も修正されると思うのです。

一方で「腰が痛いのですね。わかりました。痛み止めを出して様子をみましょう。また1週間後の予約をお願いします。」といった具合に、数分の診察で終わってしまったら、、、、、患者の欲求・感情・思考はいずれも改善せず、病院にきて得られたものが「診断料・薬の領収書」だけという悲惨な状態が待ち受けているでしょう。

読者の頭に入り込む

「読者の立場になる」ことや「読者の立場を再現する(代弁する)」ことの重要性があなたに少しでも伝わったのであれば、今回の講義の目的は達成したといえるでしょう。

そして読者の立場を再現することができるだけで、あなたの情報発信による影響が格段にアップすることが理解できれば、、、、今まで以上に「本気で読者のことを理解しよう」という気持ちにもなっているでしょう。

スティーブ・ジョブズは、「ipod(音楽視聴)、Phone(電話)、インターネットを別々の機器で楽しむなんて、スマートじゃない」と読者の立場を代弁することで熱狂を勝ち取りました。

ドナルド・トランプは、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン(偉大なアメリカ再び)」と主張することで鬱屈していた白人層を取り込むことに成功しました。

次はあなたの番です。

しかしまずは「読者の立場になる」ことに習熟しなければいけません。

残念ながら読者の立場になるということに関して、「こうすれば絶対にうまくいく」という方法はないのですが、(人間はロボットではないのです!!)、次回はカンタンに実践できるおススメの方法について解説したいと思います。お楽しみに!

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