リポビタンDという栄養ドリンクがあります。日本初の栄養ドリンクとして昭和37年(1962年)に発売されました。
1977年からは「ファイトイッパーツ!」と叫ぶ『危機一髪シリーズ』が開始されましたが、2015年には終了しています。
その裏にはリポビタンDの売上減少があります。2000年度には過去最高の797億円もの売り上げを達成するも、2015年度の売上は386億円と半減してしまっているのです。
しかしエナジードリンク市場そのものは急速に拡大しています。例えばコンビニでよく見かける『レッドブル』という商品があります。
レッドブルはオーストリアの会社で、商品は「レッドブル」のみです。それにもかかわらず全世界で6,000億円以上の売り上げがあります。
なぜ?日本人になじみ深いリポビタンDがレッドブルのような外国製エナジードリンクに市場シェアを急速に奪われてしまっているのでしょうか?
ファイト一発 VS 翼を授ける
レッドブルのキャンペーンをみれば、リポビタンDと販売しているものがまったく異なることがわかります。
あなたは「同じエナジードリンクを売っているのに、リポビタンDとレッドブルで販売しているものが違うってどういうこと?」と不思議に思うかもしれません。でも本当にリポビタンDとレッドブルでは販売しているものが『全く』異なるのです。
「百聞は一見にしかず」ということわざもありますから、リポビタンDとレッドブルのCMの両方を見比べてみてください。
いかがだったでしょうか?
リポビタンDは『ファイト一発』を売っています。その一方でレッドブルは『翼を授ける』を売っています。
2つの商品がまったくもって対照的であるということがわかるでしょうか?
リポビタンDのCMは「滋養強壮・虚弱体質に効果がある」などと『商品の特徴』について宣伝しています。
その一方でレッドブルは「疲れることに疲れたあなたに翼を授けます。」と『消費者の変化』について宣伝しています。
あなたは『商品の特徴』と『飲んだらどうなれるのか?』のどちらに興味があるでしょうか????(もちろん、後者ですよね?)
しかも・・・・・レッドブルはいつも「翼を授ける」(Red Bull gives you wiiings)というフレーズを繰り返している一方で、近年のリポビタンDのCMで強調されるメッセージはバラバラです。
『過去最高の自分になる』とか、『集中力を高める』などのメッセージを、いろんなスポーツやアーティストとコラボしては表明しているのですが、イマイチ印象に残らないのです。
よくある失敗
さて、、、、わたしが今回の講義でまずは伝えたいことは、リポビタンDのような過ちを繰り返すな!ということです。
失敗#1)商品スペックのゴリ押し
セールスするときに「商品のスペックをごり押しする」という事例が後を絶ちません。
某栄養ドリンクは「タウリン5,000mg配合」を宣伝していますが、あなたはタウリン5,000mgにどれほどの効果があるかわかるでしょうか?
また某ダイエットジムはプロテイン飲料を販売しました。謳い文句は「500mlあたり5000mgのプロテインが配合」でしたが、あなたはワクワクするでしょうか?
消費者は商品がスゴイから購入するのではありません。また商品がユニークだから購入するのではありません。
ではなぜ?購入するのか・・・というと・・・ズバリ答えは「嬉しい変化があるから」ですよね???
つまりタウリン5,000mgを摂取することで、「疲労感が軽減する」とか、「頭がシャキッとする」とか、「眠気が吹き飛ぶ」などと表現してくれないと、わたしたちにとってその商品がどう嬉しいのか?ということがわからないのです。
失敗#2)あれもこれも
「あれもできますよ。それもできますよ。」とセールスした結果、最後に「で、結局のところ、何がいいんだっけ?」と消費者から疑問視されてしまうケースも多々あります。
例えば、最新の高機能電子レンジは1台で7つの機能があるそうですが、一度聞いただけではその魅力がわからないし、ほとんどの機能は「あった方がいいもの」である一方で「なくても困らないもの」だったりします。
あなたは「あった方がいい機能がたくさんあるけれど、そのどれもがなかったとしても困らない」商品と、「なければ困る機能がだけが盛り込まれた」商品のどちらが欲しいでしょうか?
栄養ドリンクも手段
消費者は真剣にCMを視聴しているわけではありません。
ですから「あれもこれも」いわれても見込み客はそれらすべての情報を消化することができないし、商品の特徴ばかりを宣伝されても「よくわからない」となるだけなのです。
レッドブルが日本での販売を開始した時のメッセージはとてもシンプルでした。「疲れたことに疲れた?あなたに翼を授けるレッドブルはいかがですか?」というようなメッセージでした。
「疲れたことに疲れた?」の部分は、すでに前回の講義で解説した『対立』であることに注目してください。労働者のなかには「疲れているのになかなか疲れがとれない」ということで本気で悩んでいる人が一定数います。(わたしもそうでした!)
そして勘のいい方ならお気づきでしょうが、「翼を授ける」の部分が、今回の講義で詳しく解説したい『約束』そのものなのです。
栄養ドリンクそのものは、あくまでも見込み客の変化を約束する『手段』でしかありません。ですから「栄養ドリンクを飲んだらどうなるのか?」ということを約束として言葉にして伝える必要があるというわけなのです。
ベネフィット
マーケティング用語で、「約束」はしばしば『ベネフィット』という言葉で表現されます。
ベネフィットとは、ひらたくいえば「商品によって得られる結果」のことです。
例えば、パソコンを購入するために家電量販店にいけば「このパソコンのメモリは16GB」などと説明を受けるでしょうが、それだけで話が通じるのはパソコンに詳しい人だけです。
メモリが16GBあると、どんな嬉しいことがあるのか?ということを考えていくことがベネフィットを考えることにつながります。
具体的には、メモリが16GBもあれば「複数のソフトを同時に立ち上げても、パソコンがフリーズしない(動作が止まらない)」でしょう。
ではパソコンがフリーズしないと、どんな嬉しいことがあるでしょうか?
例えば「仕事がはかどる」という嬉しい経験をすることができるでしょう。
では「仕事がはかどる」とどんな嬉しいことがあるでしょうか?
例えば、生産性が上がるから「売上が上がる」ことが期待できるしょう。
以上のように、商品の特徴によってどんな嬉しいことがあるのか?ということを掘り下げていくことで、ベネフィットを突き止めることが可能になります。
もちろん、ベネフィットは一つではないし、どこまで掘り下げて考えるべきかも異なります。
例えば仕事ではなくプライベートのオンラインゲームでパソコンを利用する人にとっては「仕事の売上」のことなんてどうでもよく、スムーズにゲームを楽しめることの方がよっぽどベネフィットとして魅力を感じるでしょう。
つまりベネフィットは「商品によって得られる結果」という説明はまだ不十分だということです。ベネフィットは「商品によって『見込み客が』得られる結果」なのです。ですから見込み客が異なれば同じ商品であってもベネフィットは異なるのが自然なのです。
あなたがこれから売る商品にも『ベネフィット』があるはずです。すでに売れている商品であればセールスレターは必ずといっていいほど準備されているでしょうから、あらためて「わたしがこれから売ろうとしている商品のベネフィットは何か?」ということを考えてみてください。
擬態ベネフィット
さて、、、、、商品の特徴を元にして「この特徴が消費者にもたらすメリットはなにか?」ということを、見込み客にスムーズに受け入れられる言葉で表現することに慣れれば、無数のベネフィットを生み出すことができます。
しかし、、、、、ベネフィットのようでありながら、冷静になって考えてみると「それって、、、本当にベネフィットなの?」とツッコみたくなる『擬態ベネフィット』もあるので注意が必要です。
例えば、日清カップヌードルが生まれた背景には、飢餓に苦しんだ創業者の過酷すぎる戦争体験がありました。戦後直後は「お湯を入れて3分で美味しいラーメンが食べられる」というのは、画期的なことだったと思います。
しかしコンビニが登場し、すぐに食べれるお惣菜が24時間販売されているという環境も珍しくなくなりました。そしてコンビニが珍しくなくなると『配達』関連の商売が発達しました。
その結果、都心部では出前専門の業者が出来立てほやほやの料理を配達してくれるようになりました。さらに現在、、、、東京23区であればアプリで注文した15分後には料理が届くことも珍しくありません。
平日・週末問わずお昼時になると大行列ができるあのマクドナルドのビックマックセットですら、お金さえあれば最短10分で届くという一昔前からすればあり得ないことが現実になっているのです。
つまり今回の講義で最後に伝えておきたいことは、「見込み客に対する約束が『普通じゃない』ほど成功する確率が高くなる。」ということであり、『普通じゃないことは、時代によって変わるのが自然なことである』ということです。
インスタント麺の売上は年々減少しています。若者のインスタント麺離れが深刻なのだそうです。
なぜ?若者がインスタント麺に見向きもしないのか?というと、、、、そこそこ美味しいものがすぐに食べれるのが当たり前の時代に、「フライパンひとつで具を入れて手軽に調理」(明星、チャルメラちゃんぽんの広告文から引用)というメッセージをベネフィットとして受け止める若者が少ないからだと思います。
いまどきの若者はサラダを洗うのも「めんどくさい」のです。サラダを食べたければ「カット野菜」を購入する時代において、「フライパンひとつで具を入れて手軽に調理」という一昔前までは見込み客から驚きと賞賛を得られていた約束ですら陳腐化してしまったのです。
最後に
ベネフィットとは「商品によって『見込み客が』得られる『普通じゃない』結果」であることが理解できたと思います。
具体的には、見込み客に以下のような感想をもたれてしまっては、見込み客があなたにお金を支払いたいとは思わないのです。
- 自分には関係がない
- ワクワクしない
- 自分でもできそう
- 代替案がすぐに見つかる
是非とも、、、、見込み客に約束をするときは、以下のような印象をもたれるように最大限の注意を払いましょう。
- この商品は自分のためにある
- 将来の変化を想像するだけでワクワク
- 対立を自力で乗り越えるのは無理
- 商品との出会いは運命に違いない!
■ 次はコチラ
■ Module7のTOPへ戻る
