飲み仲間の知人(以下、田中さん:仮名)と話していた時のことです。田中さんとは近所の飲み屋でよく顔を見るうちに仲良くなったのですが、田中さんと初めて会った時の会話は今でも忘れることができません。
田中さんと顔見知りになり、たまに少し話すようになった頃、「仕事はなにしているんですか?」という話になりました。すると田中さんは、「わたしは売れない役者の、ただの田中と申します。」といいました。
田中さんは、たしかに『売れない役者』みたいな顔をしているんです。テレビのチョイ役で出演していそうな目立たない雰囲気なのに、どこか味のある顔つきをしているんですね。
『売れない役者』と『ただの田中』という組み合わせは普通すぎて、当時は特に何も感じませんでした。しかし時間が経過すればするほど、田中さんの自己紹介の凄さを実感するようになったのです。その理由は、、、、、
忘れられない
わたしの母はよくこんなことをいって、わたしを困らせます。「ほら、あの人、顔は覚えているんだけど、、、名前はホラ・・・なんていったかしら、、、ホラ・・・あの人・・・」
『あの人』を連呼されても、誰だかわかりませんよね。でもわたしも同じような経験をしたことがあるので、あなたもきっと同様の経験をしたことがあろうかと思います。
しかし先ほど紹介した田中さん(仮名)の場合は、「売れない役者」という組み合わせと「ただの田中」という組み合わせが絶妙で、すぐに思い出すことができるんです。
田中さんと出会ったお店の人に「あの売れない役者の田中さん、最近お店に来てる?」みたいな会話をすれば、お店の人も「あ~、売れない役者のあの田中さんね。もう少しでくると思うよ」とすぐにわかってくれるのです。
勘のいい方であれば、いい肩書の条件は「忘れられない」であることが予想できたと思います。そうなんです。忘れられたくても忘れられないネーミングを発見することができれば、それだけでライバルを一歩リードすることができるのです。
忘れられない条件
忘れられないネーミングを生み出す確かな方法論があるわけではないのですが、いくつか知られている条件があるので一つずつ紹介したいと思います。
条件その1)頭韻
頭韻とは、複数の単語の1文字目を同じものにするという手法のことです。
日本では「ZOZO TOWN」の「ゾ・ゾ」の部分が頭韻になっていますし、海外では「Google」の「グ」の音が頭韻になっています。
条件その2)押韻
押韻とは、単語の最後が韻を踏むようにする手法のことです。
「Coca-Cola」(コカ・コーラ)がその代表例です。
条件その3)連想
何かを連想させるようなネーミングもいい例の一つです。
例えば代表例は「カリスマ」でしょう。カリスマというのはもともと超人間的な力や魅力のことを指すのであって、人間を指すものではなかったのですが、一人のコンサルタントが「表参道に美容師集めてカリスマ名乗ったら流行がつくれるよ!」とアドバイスしたのがキッカケでカリスマ美容師は生まれました。
わたしが発売している商品にも「RICH」(リッチ)という単語の入った商品がありますが、リッチになれるイメージを連想した人がたくさんの人が興味をもってくれました。
条件その4)本能
名前を聞いただけで理由はわからないのにワクワク・ウキウキするネーミングも、忘れられないネーミングの一つです。
例えば「モテクリエイター」を自称する“ゆうこす”こと菅本裕子さんは、「モテるために生きています。」のキャッチフレーズで有名です。
男であろうが女であろうが「モテたい」という欲求は本能的な欲求です。その本能的な欲求を刺激する単語がネーミングに入っているだけで、忘れられなくなってしまうのです。
演習)あなたの肩書は?
あなたは今、ひとつのアイディアに対して複数の切り口を用意している状況にいるはずです。

少しの間、特定の問題に悩み、苦しみ、解決できずにいる人が目の前にいることを想像してみてください。
どのような肩書を名乗ったら「この人が今わたしに必要な人だ」と思われるだけでなく、「忘れられない」とまで思ってもらえるでしょうか?
思いつくかぎりの肩書を列挙してみて、最良だと感じるものを選びましょう。
自分のネーミングセンスに自信のない場合には、いくつかの候補を他人に見せて「このなかで一番ダメだと思うネーミングはどれ?」と質問してみましょう。
評価の悪いネーミングを外すだけで、自信をもって「これだ!」と思う肩書を選択することができるはずです。
最後に
残念ながら、世の中に完璧な肩書・名前など存在しません。それにもかかわらず、肩書や名前を決めなければいけない締め切りは容赦なくやってきます。
ですから時には「えいやっ!」と思い切ってネーミングしなければいけないこともあるでしょう。
わたしたちにできる最良の対策は、常日頃からネーミングについて考えることを忘れず、模索し続けることです。
模索し続ければいつかのタイミングで「これしかない」というネーミングをひらめくことができますから、その暁にはその瞬間から最良の肩書・名前で再スタートすればいいのです。
大企業が予算をかけてリリースした商品・サービスであれば、途中から名前を変えることはデメリットの方が大きいですが、わたしたちは大企業ではありませんから、納得いくまで模索し続ければいいのです。その先に、きっと答えはあります。
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