認知科学者の苫米地英人氏が三菱地所のサラリーマンだった頃、上司に新規事業を提案したもの『無視』されてしまったといって嘆いていました。
当時の三菱地所はアメリカのロックフェラーセンターを買収し、ジャパンアズナンバーワンの代名詞となっていましたが、株式会社にとって成長することは至上命題です。ですからロックフェラーセンター買収のその次についても考えておく必要がありました。
そこで当時の苫米地英人さんは、大胆な発想をしました。「地球の陸海空は自由にはできない。だから誰よりも早く衛星を飛ばして、地球衛星の軌道を専有してしまおう。」と。
宇宙は広大なので地球衛星を飛ばす空間はいくらであると勘違いしてしまいそうになりますがそうではありません。実は、衛星を飛ばすにしても高度が高すぎれば地球から離れてしまうし、高度が低すぎれば地球に落下してしまうのです。だから、必然的に打ち上げることのできる地球衛星の数もある程度決まっているのです。
そのことを理解していた苫米地英人さんは、三菱地所の上司に提案しました。「今のうちに三菱地所が地球衛星を打ち上げてしまいましょう。土地を購入して建物を建てて、その空間を売るのと同じことを宇宙でやりましょうよ!」と。
しかし結果は、、、、、「無視」されてしまったそうです。
目次
天才的なアイディアは無視される
苫米地英人さんのアイディアは、今となって考えてみれば「天才的なアイディア」だと思います。もし当時の三菱地所が地球衛星を打ち上げていれば、きっと日本の国益に大きく寄与したことでしょう。しかし残念なことに、周囲の人からは理解されなかったのです。
苫米地英人さんの話で伝えたかったことは、『見込み客から理解されないものは購入されない』という当たり前のことです。
ビジネスにおいて理解されないということは致命的なダメージになります。なぜならば、直観的に商品の良さが理解されない商品の場合、その商品がどれだけいい商品であっても、その商品について説明すればするほど、「売り込まれている感」ばかりが強調されてしまうからです。
ではどのような商品であれば、見込み客に直観的にその価値を理解してもらうことができるのでしょうか?
ズバリ見込み客にとってその商品の価値が伝わりやすいのは、「ありそうでなかった商品」です。
ありそうでなかった商品
ありそうでなかった商品というものは、とてもわかりずらいので、いくつか例を挙げて説明したいと思います。
事例#1)カルピス
昭和の頃のカルピスといえば、瓶につまったドロドロした液体でした。ドロドロした原液は甘かったので、消費者はドロドロした原液を水で薄めてカルピスを楽しんでいたのです。
しかしドロドロした瓶から原液をコップに出す作業は、あまり快適ではありませんでした。現在でもケチャップやマヨネーズを出す時に、出し口が汚くなることがあると思いますが、カルピスの場合はそれがとても顕著だったのです。
そんなある時、カルピスの若手社員が上司に「最初から水で薄めて販売したほうが喜ばれるのではありませんか?」と提案しました。しかし上司は「そんなことない。」といって提案を聞き入れなかったのです。
しかし若手社員が諦めずに繰り返し繰り返し、「カルピスは絶対に水で薄めるべきです!」と主張した結果、カルピスは現在でもコンビニエンスストアで定位置を確保しています。
事例#2)缶切り
缶切りは、缶詰が登場してから約50年後に開発されました。では缶切りが発明されるまではどうやって缶詰を開けていたのかというと、、、、缶詰はハンマーとノミで叩いて開けていたそうです。
缶切りをはじめて目にした人は、きっと感動したことでしょう。
事例#3)損失なしの金融取引
株式やFXに挑戦したくても、「損失が怖いから挑戦できない」という人も多いと思います。しかし現在では、デモトレードできるサービスも多数存在しますので、「まずは練習してから挑戦する」ことも可能です。
事例#4)男性向け美容院
床屋よりも美容院で髪をカットしてほしいという男性のなかには、美容院にいくのは気が引けるという人もいます。そんな男性向けに「男性専用美容院」を展開している企業もあります。
また一般的な美容院の営業時間は、11時~19時前後だと思いますが、「平日は仕事が忙しいから美容院に行けない。だから休日に美容院にいくしかない。」という人もいるのです。そのような方のために「深夜専門の美容院」を開業している人もいます。
ありそうでなかった商品の創り方
ありそうでなかった商品を目の前に提示されると多くの人は、「わたしはそれが欲しかったのです。なぜ?思いつくことができなかったのか不思議でしょうがありません!!」とつぶやきたくなります。
そしてキツネにつままれたような気持ちになると同時に、「この商品はきっと喜ばれるだろうな。」という強い確信を抱くことができるのです。
ではどうすれば、ありそうでなかった商品・サービスを生み出すことができるのでしょうか?
「ありそうでなかった商品」を生み出す手順自体は、実はとてもシンプルですので、リラックスして聞いてください。
手順1)他人に立場になる
男性が妊婦体験をすると、妊婦の大変さを痛感します。そして「次に電車のなかで妊婦をみたら絶対に席をゆずらなければ」という強い使命感が生まれます。簡単な説明ですが、「他人の立場になる」とはそういうことです。
他人の立場になれば「こういう商品・サービスを提示したら喜ばれるだろうな。」ということが、自然とわかるようになります。だから「売れないわけがない」という気持ちになれるのです。
しかし残念ながら「他人の立場になれる人」というのはそれほど多くありません。多くの情報発信者が、他人の立場になるというよりは「他人のために」という気持ちで情報を発信したり、商品を開発したりしているのです。
「他人のために」という言葉に悪いイメージはないと思いますが、残念ながら「他人にために」という言葉の意味は、「他人のためにやってあげたほうがいいと、わたしが思っていること」なのです。
ですから「他人のために」と主張する人は、頻繁に大きな間違いを犯します。例えば、電車で座れずに立っている妊婦に対して「電車での移動中くらいは、立って運動したほうが赤ちゃんにもカラダにもいいのではないか?」というような頓珍漢な発想をしてしまうのです。
厄介なことに「他人のために」という気持ちでいる人は、「まさか他人のために尽くそうとしているわたしが間違っているわけがない」と強烈に思い込んでいます。そのため自分の提案が見込み客に受け入れられないと「なぜ?見込み客は素晴らしいアイディアを理解しようとしないのか!?」とブーたれてしまうのです。
手順2)見込み客を想いを代弁する
他人の立場になれたら、「こういう商品を提案したら売れるだろうな。」ということがわかります。そうなったらシメタものです。あなたがやるべきことは、見込み客の気持ちを代弁してあげることです。
ちゃんと代弁することができた暁には、、、、、あなたの商品はあなたが想像する以上に売れるでしょう。なぜならば『代弁』するとは、売り込むことでもなく、特定の価値観に無理矢理誘導することでもないからです。
『代弁』するとは、見込み客が日常生活で不便を強いられていながらも気づいていない痛みを浮き彫りにしてあげることです。例えば、、、、
水で薄めるカルピスがない時代に、「カルピスの原液で手がベタベタになるのは、もうこりごりですよね?」と訴えることです。
缶切りのない時代に、「トンカチとノミがないと開けられないなんて、不便すぎますよね?」と訴えかけることです。
金融商品のデモトレードができない時代に、「いきなり本番で勝負しなきゃいけないなんて、馬鹿げていませんか?」と疑問を投げかけることです。
男性向けの美容院がない時代に、「なぜ?女性の目を気にして美容院にいかないといけないのか?」と男性を味方につけることです。
深夜営業の美容院がない時代に、「なぜ?貴重な休日の時間を美容院に奪われなければいけないのか?」と不満をあぶり出すことです。
いわれれば当たり前
水で最初から薄めて販売されているカルピスも、缶切りも、デモトレードも、深夜営業の美容院も、、、、どのサービスも他人から「こんなサービスあったらいいと思わない?」と指摘されたら、「あったほうがいいでしょ?」と思うでしょう。
そのため『ありそうでない商品』を販売することは、カンタンなように思えるかもしれません。しかし実際にアイディアをリストアップしようとすると、手が止まってしまうことはよくあることです。
なぜならば『ありそうでない商品』のアイディアをひらめくためには、見込み顧客の情報を含めた『圧倒的な知識量』と『抽象的な思考力』の両方が欠かせないからです。
知識量が足りなければ、そもそもそこに問題があるということに気づけないでしょう。ですから圧倒的な知識量は必須です。
また抽象的な思考力が高すぎれば、冒頭で紹介した苫米地英人さんのように見込み客だけでなく身内からも理解されないでしょうし、抽象的な思考力が低すぎても誰でも思いつけそうなアイディアか、すでにこの世に存在しているサービスしか思いつけないでしょう。
つまり「ありそうでない商品」を生み出すためには、日ごろからの情報収集を欠かさず、なおかつ『他の人よりもほんの少しだけ高い』抽象的な思考力を発揮できるように鍛錬する必要があるのです。
最後に
わたしが今回の講義で説明したかったことは、「ありそうでない商品」を世に送り出し、大ヒットを飛ばすということは、一朝一夕でできることではないということです。
それにもかかわらず、起業家の卵やフリーランスの大半が、ありそうでない商品を世に送り出すことが簡単だと思い込んでいるフシがあります。
その結果「ありそうでない商品・サービス」ではなく、「ありそうである商品・サービス」もしくは、「なさそうでない商品・サービス」しか思いつくことができず、四苦八苦しているのです。
もしあなたが「ありそうでない商品・サービス」を思いつくことができたのであれば大チャンスです。実際にそれらの商品・サービスを世に送り出すまでには、沢山のハードルがあろうかと思いますが、乗り越えることができた時の釣果は計り知れないものになるでしょう。
あなたには2つの選択肢があります。
1つ目の選択肢は、「ありそうでない商品」をひらめくまで勉強するという道です。そして2つ目の選択肢は、「自分で考えることをやめる」という選択肢です。
次回の講義では、2つ目の選択肢について詳しく説明したいと思います。お楽しみに!
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